重要事項説明書を読んでみよう!
購入申込書を提出して各種条件などがまとまれば
次はいよいよ契約となりますが
実際には契約前に「重要事項の説明」が行われます。
契約書の中にも様々な条項がありますが
重要事項説明書にはさらに細かい内容が記載されています。
そしてこの重要事項説明をするには「宅地建物取引士」が行います。
宅地建物取引士の資格が必要になる場面です。
重要事項説明書は聞きなれない言葉も多く
一回、流し読みしただけだとなかなか理解できません。
実際に契約したお客さんの重要事項説明書を基に解説をしていきます。
重要事項説明書に記載される内容
●取引の態様、取引に関与する不動産業者、供託所等に関する説明
今回の不動産取引はどのような取引かを記載します。
取引の態様としては売主・代理・媒介の3種類で
取引の種類は売買・交換・賃貸の3種類となります。
新築戸建の契約をした場合は上記のようになります。
分譲会社が売買・売主となり当社が売買・媒介です。
中古物件で売主さんが個人の場合は
売買・媒介のみとなります。
続いては不動産会社の免許証番号や主たる事務所の所在地や代表者などが記載されます。
不動産免許は都道府県知事もしくは国土交通大臣に申請します。
2つ以上の都道府県に事務所を持つ場合は国土交通大臣に申請をします。
重要事項説明をする宅地建物取引士の氏名、登録番号、業務に従事する事務所などがあり最後に供託所に関する説明です。
不動産の免許を取得するには保証金を預ける必要があります。
その金額は本店事務所が1,000万円、支店事務所が500万円です。
大手不動産会社なら問題ないかもしれませんが
当社のように個人会社にとってはとてもハードルが高い金額です。
そこで国土交通大臣が指定した保証協会に加入して
弁済業務保証金の分担金を支払えば保証金が免除されるという制度があります。
分担金の額は本店事務所が60万円、支店事務所が30万円です。
どこの団体に加入しているかを説明することも義務となっています。
(団体はハトマークの宅建協会とウサギマークの全日の2種類)
●不動産の表示・売主の表示と占有に関する事項
売買対象の不動産が記載されています。
所在や地番、登記簿上の宅地や土地の面積を確認しましょう。
登記簿上の面積を公簿面積と呼び
実際に測量をした面積を実測面積と呼びます。
今回の土地は1つの土地を3つに分筆する時に測量をしているので
登記面積と実測面積に違いはありませんが
数十年前にしか測量をしていない場合は
登記面積と実測面積に差があることもあります。
権利の種類に関しては借地以外は全て所有権となります。
新築戸建の場合は契約段階では登記されていません。
(契約後に買主さん名義で新たに登記を行います)
登記されていないので床面積などは確認済証などの数字を記載します。
登記される面積と差異が生じる場合があります。と書いてありますが
今までの経験上、新築戸建の建売で差異が生じたことはありません。
売主さんが誰かが書いてあります。
基本的には登記簿記載の所有者と同じですが
相続などでまだ相続手続きが終わっていない場合は登記簿記載の所有者と異なることもあります。
それ以外で売主さんと登記簿記載の所有者が違う場合は
慎重に取引を行いましょう。
住宅ではあまりありませんが不動産詐欺ということもないわけではありません。
第三者の占有の有無です。
賃貸で貸している場合などは占有が有となります。
投資用物件であれば問題はありませんが住むために購入する物件で占有があるのであれば
引渡し時までに退去してくれるかどうかはしっかりと確認しておきましょう。
●登記記録に記録された事項
不動産は誰が所有しているかというのを登記されています。
対象物件の登記簿謄本に記録された項目が記載されています。
基本的には売主=所有者となっています。
今回は権利部(乙区)に何も記載がありませんが
銀行から借入をして土地を仕入れている場合や
個人の方で住宅ローンを借りている場合は
権利部(乙区)に抵当権という権利が設定されています。
抵当権はわかりやすく言うと担保ですが
抵当権があるからダメということではありません。
抵当権が抹消できることを確認してから
売主さんに代金の支払いをします。
建物に関しては今回は新築で未登記なので斜線となっています。
●都市計画法に基づく制限
日本では自分の土地だからと言って好き勝手に建物を建てることはできません。
大まかにわけると都市計画区域内か否かです。
私が普段仕事をしている名古屋なその近郊は全て都市計画区域内です。
なので都市計画区域外の物件は扱ったことがありません。
(ネットで調べたら建築は可能なようです)
都市計画区域内でも種類があり
市街化区域・・家を建てても問題ない地域
市街化調整区域・・家を建てるのに条件がある地域
区域区分のされていない区域・・今まで取引したことがないので詳しくはわかりません(笑)
市街化区域であれば建築には何の問題もありません。
(後述する建築基準法上の制限は受けます)
市街化調整区域は市街化を抑制する区域なので
建築には厳しい制限があります。
なので建築ができるかどうかをしっかりと確認しましょう。
市街化調整区域で建築ができる場合は
・開発許可を受けてその開発許可に適合する建築
・建築許可が不要な建築(畜舎、温室、育種苗施設や医療施設、学校など)
・建築許可を受けた場合(非常災害のために必要な建築物、仮設建築物)
のいずれかとなります。
以前は既存宅地制度というものが存在し建築許可を受けなくても建物の新築は可能でした。
・市街化区域に隣接している地域内
・おおむね50戸以上の建築物が立ち並んでいる地域内
・市街化調整区域に編入された際にすでに宅地であった
現在は既存宅地の制度は廃止されていますが
以前、既存宅地内の土地であれば現在も建築できるケースもあるようです。
(私の仕事している地域では市街化調整区域自体がほぼないので詳しくはないです)
●建築基準法に基づく制限
建築基準法は国民の生命・健康・財産の保護のため
建築物の敷地・設備・構造・用途について最低基準を定めた法律です。
地域によってどのような建物が建築可能かとういのは
用途地域で定められています。
全ての用途地域を細かく説明すると長くなるので簡単に説明をしておきます。
建築するのに一番厳しい規制の地域は「第一種低層住居専用地域」です。
読んで字のごとく低層(10m)の住居、アパートしか建築することができません。
高層の建築物は建築できないので日当たりや住環境は良好ですが
スーパーはもちろんコンビニも建築できないので利便性は落ちます。
(床面積が50㎡までの店舗兼住宅は建築可能)
第二種低層住居専用地域は店舗等も建築可能ですが
床面積が150㎡までのものに限定されます。
第一種中高層住居専用地域は高さの規制が緩くなり
マンションなども建築可能な地域です。
店舗の床面積も第一種中高層で500㎡以下、第二種中高層で1,500㎡以下までなら建築可能です。
上記の表の番号が大きくなるほど規制は緩くなっていきます。
(田園住居地域を除く)
駅前などは商業地域になっていることが多いし
町工場や倉庫が多い地域は準工業地域だったりします。
どの地域にも一長一短はあります。
低層住居専用地域は駅から遠かったり
近隣にお店がなく不便だと感じる方もいるし
商業地域などは駅やお店が近くにあり利便性は良いけど
人が多いのが嫌だという方もいます。
ちなみに用途地域を限定して探す方はあまりいません。
続いては地域・地区・街区ですがここは用途地域によって決まってくることが多いです。
防火に関する部分だと
商業地域=防火地域
準工業地域=準防火地域
低層住居専用地域=建築基準法第22条区域
といった感じです。
防火地域で2階建ての建物を建てる際には耐火建築物、準耐火建築物
準防火地域だと木造建築は外壁や軒裏、開口部などに
一定の防火措置が必要という規定となります。
耐火建築物
鉄筋コンクリート造や耐火被膜した鉄骨造を指します。
窓等の開口部を防火窓や防火ドアにすることも必要です。
(木造でも耐火建築物にすることは可能です)
準耐火建築物
耐火被膜した木造住宅や耐火構造ほどではないが一定基準に適合する構造です。
窓等の開口部は耐火構造と同じです。
高度地区は建物の最大高さを制限している地区です。
今回の物件だと31mの建物であれば建築が可能です。
後から出てきますが最大の高さは31mですが
高さに対する制限もあるので
なかなか最大の高さの建物が建つことはありません。
緑化地域
名古屋市ではほぼ全域が緑化地域に指定されています。
一定規模以上の敷地に新築、増築する場合は緑化が義務付けられます。
とはいえ対象となる敷地面積は地域によって異なりますが
300㎡以上とかなので一般的な大きさの住宅であればほぼ関係ありません。
新しくできたコンビニなどで駐車場の一部が芝生になっている場合は
この緑化地域の制限を受けている可能性が高いです。
居住誘導区域
都市再生特別措置法という法律が2014年に施行されました。
立地の良い場所に集まって住むことを目指している国策です。
住む地域が集中することによってインフラ整備や行政サービスの効率が上がります。
不動産価格を考えると人の集まる地域は
不動産価格が維持(上がる!?)し
立地の良くない場所は不動産価格が大幅に下がる可能性があるということです。
●建築面積の敷地面積に対する割合の限度(建ぺい率)
建ぺい率は敷地に対して建築可能な割合のことを指します。
土地面積が100坪で建ぺい率が60%だと60坪まで建築可能という意味です。
建ぺい率は用途地域によって指定があります。
第一種、第二種低層住居専用地域は30%・40%・50%・60%
第一種、第二種住居地域では50%・60%・80%
商業地域で80%
住居専用地域は制限が厳しく
商業地域はそこまで制限が厳しくないです
当然ですが建ぺい率が大きいほど敷地に大きな建物を建築可能です。
名古屋市はインターネットですぐに調べることが可能です。
↓
●建築物の延床面積の敷地面積に対する割合の限度(容積率)
容積率は敷地面積に対して3次元空間の割合を指します。
100坪の土地で容積率が200%だったら敷地内に200坪の建物が建築可能です。
建ぺい率が60%だったら
1階:60坪
2階:60坪
3階:60坪
のような感じの総3階建てが建築できます。
建ぺい率同様
第一種、第二種低層住居専用地域で50%・60%・80%・100%
第一種、第二種住居地域で100%・150%・200%
商業地域で400%・800%
といった感じになっています。
低層住居専用地域ほど規制が厳しく
商業地域は規制が緩くなっています。
低層住居専用地域の場合だと
建ぺい率40%、容積率80%などの地域も多くあります。
そうなるとある程度大きな土地でないと
希望の建物が建築できないことになります。
次に出てきますが壁面後退や高さ制限なども厳しいです
土地の面積が大きくなればそれだけ土地価格も高くなります。
ここまで建物に様々な制限があるということがわかったと思います。
ですが建物に対する制限はまだまだあります。
●壁面線の制限
道路境界線から後退する距離の制限です。
名古屋市の場合、あまり制限されている地域はありませんが
制限の指定を受けると建物の壁や柱や門などは原則として壁面線を越えて建築することができません。
大阪の御堂筋は建物が一直線上に並んでいるので
壁面性の制限を受けている地域だと思います。
●外壁後退
規制を受けるのは低層住居専用地域になります。
建物の外壁と隣地境界線を1m、1.5m離さないと建築だできません。
壁面線の制限は道路からだけでしたが外壁後退は全ての境界線からの後退が必要です。
そのため間口が8mの土地の場合でも実際に建築できる建物間口は6mとなります。
●敷地面積の最低限度
大きな土地を2つに分割して販売されることもあります。
地域によっては150㎡以下での分割ができないという地域もあります。
以前取引した土地にはこの最低限度がありました。
大きさは250㎡(約75坪)でした。
1つのままでは販売価格が高くなるので
分筆して販売しようとしましたが最低限度の規制により分筆販売ができませんでした。
●建築協定
建築基準法で定められた基準に上乗せすることができる協定です。
民間の協定で知事や市長の認可を受けたものです。
名古屋市内の建築協定の例を出すと
高峰町住宅地区建築協定
建築物の用途は、一戸建専用住宅及びこれに附属する物置、車庫、門等とする。
建築物の階数は地階を除き3以下とする。
敷地の周囲に垣、柵等を設置する場合は努めて生垣又はフェンス等で透視可能なものとすること。
敷地内の空地は、周囲の環境との調和を図るよう緑化に努めなければならない。
東井の元町建築協定
協定区域内では、次の建築物を建築し、又は用途変更してはならない。
(1)ワンルームマンション(住戸又は住室の床面積が25平方メートル以下の共同住宅)
(2)風俗営業及び店舗型性風俗特殊営業の用途に供するもの
(3)専ら営業を目的とする個室カラオケボックス
協定区域内の建築物の用途、形態等は次の各号によらなければならない。
(1)地階を除く回数は5以下
(2)建築物の高さは前面道路の路面の中心から15メートル以下
(3)共同住宅等で住戸数の60パーセント以上の駐車場を確保するこ
などがあります。
建築基準法上は建築に問題がなくても地域の取り決めでワンルームマンションの規制をしたり
高さの制限や共同住宅の駐車場の数を規制したりしています。
私が知る限りで一番厳しい建築協定は
兵庫県芦屋市の六麓荘町という地域です。
敷地面積の最低限度は400㎡(121坪)で
建ぺい率は30%、容積率は80%
建築物は個人専用住宅のみとなっています。
さらに建物の色彩もけばけばしいものは不可となっています。
●建物の高さの制限
絶対高さ
第一種、第二種低層住居専用地域内は建物の高さが10mまたは12m以下に制限されます。
これが絶対高さの制限です。
10m、12mのどちらになるかは都市計画で規定されていますが
私が今まで取引をした地域は全て10mでした。
道路斜線制限
接している道路の幅員に基づいて道路側に面した建物部分の高さ制限です。
道路への最高や通風を確保することが目的です。
全ての用途地域で適用されているので
一般的に家が建てられる地域は全て道路斜線制限があります。
とはいえ道路側は通常、駐車場にすることが多いのでそこまで気にする必要はありません。
隣地斜線制限
隣地に面した建築物の高さが20m、31mを超える部分についての制限です。
一般的な住宅で20mを超えることはまずないのでほぼ関係ありません。
北側斜線制限
第一種、第二種低層住居専用地域、第一種、第二種中高層住居専用地域は北側斜線制限の規制を受けます。
あなたの購入しようとしている土地が南道路の場合、日当たりの良い南側を広く取ろうとすると思います。
そうなると北側ギリギリに家を寄せることになります。
あなたの土地の北側は裏の方の南側になります。
北側ギリギリに家を寄せたら裏の方の土地には日が当たらなくなってしまいます。
それではいけないのでこのような制限があります。
規制は上記の図のようになります。
●日影による中高層の建築物の制限
商業地域、工業地域、工業専用地域以外の用途地域で制限があります。
冬至の日を基準にして一定時間以上の日影が隣地に生じないように建物の高さを制限するものです。
周囲の敷地の日照を確保することが目的です。
用途地域によって規制が違いますが
一般的な2階建てであれば制限の対象外となります。
また5m以内の隣地の日照は考慮されないのでそこまで気にする必要はありません。
●敷地等と道路との関係
建築基準法では
幅員4m以上の道路に敷地が2m以上
接していないと建築はできません。
ここでは道路の幅員、接道幅をしっかりと確認しておきましょう。
現在、建物が建っていても
幅員、接道幅を満たしていないと
将来的に建て替えは不可能となります。
また道路の種類も重要です。
道路には公道(市や町、国が管理)と私道(個人所有)があります。
公道であれば建築には何も問題がありません。
私道でも建築基準法上、道路と認められていれば建築は可能です。
公道であれば維持、管理は公共機関が行いますが
私道の場合は所有者が維持、管理をすることになります。
また道路の下にはガス管や上下水道などが走っています。
工事をする際に所有者の承諾が必要になることもあります。
名古屋の場合、私道に接している道路は
そこまで多くはありません。
古い住宅地では道路の幅員が4m未満の道路もあります。
4m未満だと絶対に家が建築できないかというと
そういうわけではありません。
例えば道路の幅員が3mのしかなくても
道路中心線から2mを道路とみなすことで
建築可能となります。
この図の場合だと敷地の50㎝分を道路とすることで
建築をすることができます。
この50㎝部分は道路とみなすので
家の建築はもちろん門などの設置などもできません。
●私道に関する負担等に関する負担の内容
接している道路が公道であれば全く関係ない項目です。
もともと大きな土地を分筆して開発道路を入れていることもあります。
(斜線部分が道路です)
この道路部分は各所有者さんで持ち分を所有することになります。
所有権があるので固定資産税の課税対象となることもあります。
●対象不動産に含まれない私道に関する事項
これも道路が公道であれば関係ありません。
というかこの項目が(有)の取引をしたことがないので
詳しく調べたことがないので内容はあまり理解していません・・。
重要事項の説明はまだ続きますが
ブログの仕様上、これ以上画像が貼れないので
次回以降に続きを解説致します。
講義7 住宅購入のスケジュール